初恋の絵本
『よーし。帰って晩飯食うか』
『彰吾のおうち。今日の夕ご飯なに?』
『ハンバーグだって、お母さん言ってた』
『いいなあ。お母さんの作ったハンバーグ、食べたいなあ』
『心実は?』
『うちは……どうしよっかなあ。………そうだな。うん。私もハンバーグにしよう』
『そうか』
『うん。彰吾のお母さんのハンバーグには敵わないけど、美味しいの作るよ』
『……お前も』
『ん?』
『お前も食べに来いよ。ハンバーグ食べさせてやるから』
『ほんと?』
『ああ。うちの母さんのハンバーグ、美味いから。酒すげー入ってて』
『お酒入りはちょっと』
『うるさい。黙ってついてこい』
あの日。
初めて彰吾の家に遊びに行った。
作ってもらったハンバーグは
玉ねぎがシャキシャキしてて
美味しかった。
あったかかった。
小学4年からずっと。
彰吾は晩ご飯の時、
必ず傍にいてくれた。
淋しい夕食なんて、
しばらく知らずに過ごしていた。