初恋の絵本
今日は試合のはずだった。
好きだから、
いつも傍にいて欲しかった。
でも、君は人気者だから。
好きだけどワガママ言えなくて。
『俺じゃ、青山がいなくなった分を埋められない?』
昼休みの問いかけにも、
答えられなかった。
「……ハル」
そのにはハルが立っていた。
「どうしたの?まだ青山出てきてくれないの?」
「試合は……?」
「ああ。ちょっと抜け出してきただけだから平気。それより、浮かない顔してどうした?心実らしくないね」
「……ハル。ごめんね。私、選べない」
「選べないって?」
穏やかに笑うハルは
さっきのハルじゃないみたい。
「ハルのことが好き」
「うん」
「でも、彰吾も大切」
「そっか」
「でも、ダメって。選ばなきゃって」
「選ばなくて、いいよ」
難しい問題をすらっと解くように。
魔法みたいに笑うハルは
いつも優しい。
「でも。ハルは嫌じゃないの?彰吾のこと、友達って思ってたら」
「俺が好きだから、いいよ」
ぽんぽん。と。
頭を撫でられてら
とうとう私は泣いてしまった。
「心実にそんな顔させる方が、よっぽど嫌だ」
「……ハル…、私。彰吾の友達でいたいの。ずっと。ずっと……。あんなに仲良くしてくれたのは、彰吾だけだった。優しくしてくれて、嬉しかった。楽しかったの………だけど、さよならって…。……友達になりたくないって。彰吾が…」
泣いている私の声は
掠れてて言葉になっているかは
分からない。
「私は…彰吾が好き。ハルと違う好き。好きでいたら、ダメなの?いけないことなの?私が好きだと離れていっちゃうの?」
「心実」
「さよならなんてヤダよお〜」
止まない私の涙。
何度も何度も頬を伝う。
「好きでいなよ」
「……え?」
「好きでいたらいいよ。好きだとね。また会えるから」
「ほんと?」
「本当だよ」
ニコニコと笑うハル。
その笑顔をみたら
なぜかまた安心して
涙がでてくる。
「大丈夫。だから、泣かないで」
その言葉に確信する。
このハルは、あのハルだったんだ。
あなたは間違いなく、
私の『ハル』なんだね。
「もう大丈夫。平気だよ」
「うん?」
「ハルが傍にいてくれるなら。きっと平気だね」
「心実……。うん。俺も。心実がいてくれるなら、頑張れる」
「えへへ」
「よかった。笑ったね」
うん、ハルがいれば笑ってられる。
だから、今。
思いっきり笑った。