初恋の絵本
嘘つきのハンカチ
放課後は今日もあのビルへ。
もはやストーカーかもしれない。
だけど私は彰吾を諦めきれない。
だって好き。
もうかなり会ってないけど、
話してないけど。
いつだって大事な友達。
大切な友達だ。
彰吾は友達と思ってないかもしれない。
でも。
あの日々が嘘じゃない限り、
私は永遠に友達だと思ってる。
この部屋には、
私の欠片が残っている。
「心実」
そろそろ来る頃じゃないかと思ってた。
ハルが自販機の前で
私を待っていた。
「ハル。うん。また会えなかった」
「会えた方がビックリする」
「だね」
「いつまで続けるの?」
「会えるまでかな」
「心実らしいね」
放課後のハルは予測不可能。
どこから現れるか分からない。
だって、ハルは部活中のはずなのに。
なぜか私の隣にいる。
「ねえ」
「なに?」
「部活。サボりすぎじゃない?」
「なにか問題になってた?」
「ううん。翔くんもなにも言ってこないから平気だとは思うけど」
「なら気にしなくていいよ」
「うん」
私は怖い。
このハルがいなくなったら、
私はまた一人になるの?
それは嫌だ。
学校のハルはみんなにあげるから、
放課後のハルは私にちょうだい。
「ハル」
「ん?」
「どうして、学校で彰吾の話すると不機嫌になるの?今は普通なのに」
「そんな風に見えた?」
「見えたっていうか、嫌いって言ってるよね。彰吾のこと」
「ほら俺、ツンデレだから。心実と二人じゃなきゃ本音言えないんだよ」
「そうなんだ。でも、あんまり彰吾のこと悪く言わないでね。本当はすごく優しいんだから」
「分かってる。心実から聞いたし。いい奴だなって思うよ」
「よかった」
「……心実」
「なに?」
「なんでもない」
何か言いたげなハルだったけど、
口を閉ざした。
「やだ。なに?怒った?」
「怒ってないよ。そうだなあ。うん。心実が青山のことばかり言うからすねてんの」
「え?すねるとか似合わない」
「ひどい。俺だってすねるし、ヤキモチ妬くよ」
「私も毎日嫉妬してる」
「そうなのか」
「そうなのです」
そういって微笑み合う。
この瞬間が、とても幸せに感じる。