初恋の絵本
授業中。
ほんとは教室で授業を受けないと
いけないんだけど。
私は今、屋上にいる。
茉桜ちゃんが妃ちゃん達を読んで。
〝作戦会議〟だの
〝情報会話〟をするらしい。
私はなんとなく、
グラウンドの方を見た。
行くあてがないのだろうか。
まだ琥珀ちゃんは、
そこで誰かを待っていた。
「まだいるんだね、琥珀ちゃん」
「ああ。あの子?ハルの妹だっけ?」
「誰かあいつの中学に電話しろよ」
「いや、義務教育最高すぎだろ」
バレると大変だから。
でも、何人も教室にいない時点で
バレてるけど。
そこそこ小さな声で笑うみんな。
「この前すごかったよね」
「なにが?」
「あの子の目。二重いじりすぎて真っ赤にかぶれてるの」
「つかさ。なんかさ。心実に似てきたよね」
「いやいや。あんなのと心実を一緒にするなし」
「そっか。間違えた。ごめん。琥珀が心実の真似してキモいんだよ」
「私の?」
「そう。ウチなんて、直で聞かれたよ?心実さんってどこのジャンプー使ってるんですかあ?って。キモっ‼︎」
「ええ。何ソレ怖え!」
「心実の真似したって心実になれないのにねえ」
「つか、心実になりたいんじゃなくてハルの彼女になりたいんだよ⁉︎」
「流石妃!深い‼︎」
みんなおしゃべりに夢中になって。
気づけば、そのまま
授業が終わってしまった。