初恋の絵本





授業中。

ほんとは教室で授業を受けないと
いけないんだけど。

私は今、屋上にいる。



茉桜ちゃんが妃ちゃん達を読んで。

〝作戦会議〟だの
〝情報会話〟をするらしい。



私はなんとなく、
グラウンドの方を見た。


行くあてがないのだろうか。

まだ琥珀ちゃんは、
そこで誰かを待っていた。




「まだいるんだね、琥珀ちゃん」

「ああ。あの子?ハルの妹だっけ?」

「誰かあいつの中学に電話しろよ」

「いや、義務教育最高すぎだろ」



バレると大変だから。

でも、何人も教室にいない時点で
バレてるけど。

そこそこ小さな声で笑うみんな。




「この前すごかったよね」

「なにが?」

「あの子の目。二重いじりすぎて真っ赤にかぶれてるの」

「つかさ。なんかさ。心実に似てきたよね」

「いやいや。あんなのと心実を一緒にするなし」

「そっか。間違えた。ごめん。琥珀が心実の真似してキモいんだよ」

「私の?」

「そう。ウチなんて、直で聞かれたよ?心実さんってどこのジャンプー使ってるんですかあ?って。キモっ‼︎」

「ええ。何ソレ怖え!」

「心実の真似したって心実になれないのにねえ」

「つか、心実になりたいんじゃなくてハルの彼女になりたいんだよ⁉︎」

「流石妃!深い‼︎」



みんなおしゃべりに夢中になって。

気づけば、そのまま
授業が終わってしまった。





< 84 / 174 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop