初恋の絵本
あのハンカチはダメ。
ルミナスのマークのエンブレム
の入った宝物のやつ。
彰吾が買ってくれたハンカチ。
発売日の前日から並んで
何とかゲットしたものなのに。
「ハル〜!心実さんにもらったあ!」
「心実に?」
気づけばフェンスの向こう。
琥珀ちゃんはハルに、
私のハンカチを見せびらかしていた。
「ハル!そのハンカチ……」
慌てて、フェンスの扉の
ところに駆け寄る。
「心実。ハンカチ、ありがとう」
「え?」
「ほら。琥珀もお礼言えよ」
「心実さん。ありがと〜〜♪」
「………」
私、ハンカチあげてないのに。
なんであげたことになってるの?
「私、ハンカチあげてないよ。返して」
ハルを無視して
琥珀ちゃんに言い寄る。
『心実、怒ると怖いんだよな。特に顔。目がデカイし怒るとキリッとしてて、俺でも怖いぞ』
そういや前に彰吾がこんなこと
言ってた。
こんな時でも彰吾のことを
思い出してします。
多分私今すごい目、
キリッとしてるはず。
「ええ〜〜。どうしてそんなこと言うんですかぁ?くれるって言ったじゃないですかあ。急に惜しくなったんですかぁ?心実さんって意外とケチなんですね♪きゃははっ!」
ケチ?ふん、ケチで悪かったわね。
心じゃそんな感じ。
「そんなこと言ってないよ。どうして嘘つくの?」
「心実。中学生にムキになるなよ」
「ハルには聞いてない」
「はあ?」
「私、嘘つきは嫌い」
ムッとするハル。
なによその顔。
ムカついてるのは私なんですけど。
「ハンカチくらい、いいじゃねえかよ」
「よくない。ハンカチだから起こってるんじゃないの。嘘ついたことに怒ってるんだよ」
「はあ。そうですか」
「ごめん。ハルも嫌い」
「なんだよそれ」
「…ハンカチくらい……別に…いいよ。でも。嘘はよくない!」
「心実!」
「さよなら」
もうどうでもいい。
あんなの。
私のハルじゃない。