初恋の絵本
「ちょっと!ハル‼︎心実がハンカチ盗まれたのに。あれはないんじゃないの?」
「うちら、全部見てたから。最低!」
「どういうことだ、琥珀?」
「琥珀は悪くないよ〜〜。ほら、ハルは琥珀のこと信じてくれたよねえ?あの人よりも!」
「………っ!」
後ろから誰かが走ってくる。
振り向かなくても、わかる。
でも、嫌だ。
私が会いたいのは、この人じゃない。
いくらハルが走るの速くたって。
私だって女子じゃリレー戦にだって
選ばれるもん。
けど、勝てるわけないから。
曲がり角の向こうで、
思いっきりダッシュした。
見るもの全てが嫌いになりそう。
なるべく世界を見ないように走った。
そしたら、思いっきり人に
ぶつかった。
「す、すみません……」
「……………」
「彰吾?」