初恋の絵本
ワンルームのこの部屋は、
キッチンが直結している。
テーブルには、2人で撮った写真と
カップラーメンが
置いてあった。
「またカップラ⁉︎体に悪いからやめなよ」
「うるせえな。忙しい俺にはピッタリなんだよ。食事なんてゆっくり取れるか」
「またお父さんのお手伝い?」
「手伝いっていうか……まあ。そんなもんだ」
「ふーん」
彰吾の指がパソコンに触れると、
スリープからスタンバイに
画面が切り替わった。
モニターには
無数の名前と電話番号。
彰吾のお父さんはヤクザだ。
一体、
なんの仕事を手伝ってるんだろう。
「でも今日くらいはインスタントはなしにして、ゆっくり普通にご飯食べようよ」
「ゆっくりさせるつもりなら、お前が作れよ…」
「いや。私もゆっくりしたいし」
「おい」
親が忙しい彰吾。
親のいない私。
彰吾とは、よくこうして
夕飯を一緒に食べていた。