初恋の絵本
「うわぁあああんっ!琥珀ブスじゃないもぉおおおんっ!」
「琥珀」
「ハルぅ………琥珀、ブスって言われたよぉ。ハンカチも取られタァ!心実さんひどいよぉ!心実さんばっかりズルイ〜〜‼︎」
「青山!中学生に言い過ぎだぞ!謝れよ!」
「謝るのはお前の方だろ。バカじゃねえの?」
「ああ⁉︎ケンカ売ってんのかコラ!」
「ケンカとか。素人がくっだらねえ。つか俺に勝てんの?晴川クンは黙ってサッカーでもやってろよ」
「てめ……」
至近距離でハルに詰め寄る彰吾。
慌てて、その手を引っ張る。
「やめて彰吾。もういいよ。ハンカチ返してもらったし。行こう」
なんだか疲れた。
一分一秒たりとも、琥珀ちゃんと……
ハルと同じ空間にいたくなかった。
「待てよ、心実。なんで青山と行くんだよ⁉︎こっち来いよ!」
私、本当にこの人が好きなのかなあ?
今は嫌いで嫌いで。
どうしようもない。
「おい!シカトかよ‼︎」
「ハルぅ、琥珀と一緒にいてよお。あんな女、どうでもいいじゃん。性格悪いし、付き合うのやめちゃえばあ?」
後ろから聞こえてくる
やり取りが不快すぎて
足取りが速くなる。
「……心実。離せ。晴川ブン殴ってくる」
「ううん。いいの。ハンカチ、取り戻してくてただけで充分だよ」
「そうか」
「……ありがとう」
彰吾の腕にぎゅっと摑まりながら
ひたすら歩く。
誰にも泣いた顔を見られなように。