初恋の絵本

「友達って、言ってくれて……また、私のとこに戻ってきてくれて……ありがとう」


「……正直、まだ友達って、はっきり言えないけど」

「うん」

「あんなお前見てたら、黙っていられなかった」

「…………」





そうだよね。

我慢してるよね。

まだ、わだかまりが残ってるよね。

でも、私のこと。

助けに来てくれたんだね。







「ありがと」







泣いてるのがバレバレだけど。

顔を見て言いたかったから。

上を向いて彰吾と向き合った。





「心実」

「……ん」

「心実の可愛い顔が台無し」

「………っ///」



そう言って、彰吾は手で
私の涙を拭った。

男の子に顔を触られるなんて
ないから。

すごくドキドキした。





「心実」

「……ん」

「俺、まだあの部屋には帰れない」

「………」

「お前のこと、まだ引きずってる。今も好きだ。きっと、ずっとお前のことが好きだ」

「彰吾……」










『大丈夫。だから、泣かないで』


『ハンカチくらい、いいじゃねえか』




どうして同じハルなのに。

今はこんなに傷ついているの。





「なんであんなのがいいんだ。お前は？」

「なんでだろ。分かんないや……」

「バカだな。俺にしとけばよかったのに……」

「本当だよ。彰吾が彼氏ならよかったのに……」




そうゆうと。

引き止める間もなく、
自分の家の前なのに
別の方向へ行ってしまった。



一人になりたくない。

だけど、あの背中を追いかけては
いけない気がした。