イセモノガタリ
「いかにも。

ここは我が住処よ。

本来なら無礼者は皆捕らえて喰らうてやる所だが…

しかし、ふむ」

細く長い指を唇に当てて考える素振りを見せた青年。

少し間を開けた後、男を一瞥してニィと笑った。

「お前は先の女よりも不味そうだ。

我かて腹も減っておらんのに、わざわざ不味いものを喰いたくはない。

見逃してやるよ」

ゆったりと喋る青年の言葉を聞き、愕然とする男。

「く…喰っ、た?」

「ああ。美味であった」

舌なめずりする青年を、しかし男は睨み付けた。

「姫を…返せ」
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