イセモノガタリ
「好きな女はモノ扱い、敵との格差も見分けられない。

人の子よ、育った環境のせいとはいえ最悪だな」

臆することなく相手を愚弄し。

鬼は嘲る。

男よりもだいぶ高い目線。

上から見下ろす圧力に、男の肝が冷えていく。

指を離しさえすれば攻撃できるというのに

体が動かない。

額を、首筋を、背中を、冷たい汗が流れるのを感じた。

「…あ、…あ」

既に喉の奥でしか声を発することも出来ない男。

しかも、その声すら意味を成さない音に成り下がっていた。
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