イセモノガタリ
「とにかく。俺に構わず、姫は休んでいてくれ」

「でも…」

「頼むから」

押し問答の果てに、ようやく彼女は俺の要求に了解してくれた。

これでいい。

我慢するのは今だけでいいんだ。

何、今までだって顔も見れない日は沢山あったじゃないか。

ーあの頃とは違い、今は彼女が手の届くところに居る。

だからこそ我慢が難しいのだがー

しかし、あと少し。

それだけ逃げ切れば、本当に、比喩などでなく一生一緒に居られるのだ。

それを想えば、俺がいくら苦労しようが大したことではない。

男はそう腹に据え、行く先を想像して幸せに浸った。
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