イセモノガタリ
自分が落ち着いて、頭に浮かんだのは姫の泣き顔。

そういえば雷に酷く怯えていた。

さっきのは格段に激しかったし、かなり辛いかもしれない。

様子を見に行こう。

小走りに走り、戸越しに

「姫?俺だ。平気か?」

と声を掛ける。

しかし、返事は無かった。

寝ているのか。

そう思って戸を何度か叩いたが、一行に何か声がする気配はない。

耳をそばだててみたが、絹ずれや寝息1つ聞こえなかった。

「ー姫?…入るぞ」

一言断って戸を開ける。

そこに姫は居なかった。
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