赤い流れ星3
「では…あ…」

KEN-Gさんが何かを言おうとされた時、不意にバッグから携帯の着信音が鳴り響いた。



「……すまんのう、ちょっと待ってておくれ。」

私達は道の端に寄って、KEN-Gさんの電話が終わるのを待つことにした。



「あれは行かんと言うたじゃろ!」

KEN-Gさんは電話に向かって声を荒げて言い争っていらっしゃった。
なにか仕事上のトラブルなんだろうかと、美幸さんと小声で話しながら様子を見ていると、だんだんとKEN-Gさんの声のトーンが下がっていって…



「……わかった、わかった。
行けば良いんじゃろ。
ただし、すぐに帰って来るからな。
はいよ。じゃ、また後でな……」

KEN-Gさんの沈んだ表情を見れば、なんとなく会話の内容の察しはついた。
きっと、何か急な用事が入ってカラオケには行けなくなったんだと。



「……実はな、急な用事が入ってな…
本当はあんまり行きたくないんじゃが、前々から招待されてたそうで何がなんでも顔を出さにゃならんらしい…
でも、すぐにすむから先にふた……あぁ、そうじゃ!
おまえさん達も一緒に行こう!」

「え…一緒にって、仕事なんでしょ。
そんな所に、ねぇ…」

美幸さんの言葉に、私は頷いて苦笑いを返した。



「いや、仕事とは言うてもビルの入居者の開店パーティなんじゃ。
ちょっと顔だけ出して、乾杯でもして帰ってくれば良い。」

「パ、パーティって…私達こんな格好だし…」

私達は、ファミレスで食事をするだけのつもりだったから、当然、いつもの普段着を着ていた。
もちろん、それはパーティに行けるような服装じゃない。



「そんなもんは気にすることはない。
気になるなら、服を買って着替えていけば良いじゃないか。」

「そ、そこまですることないよ。
おじいさん、一人で行ってきなよ。
私達、どこかで待ってるから。」

「えーーーっ、そんなのいやじゃ、
男ばかりの所に行っても、何も面白うはないし…」

おじいさんは拗ねたような口調でそう言って、俯かれた。



「男ばかり?……一体、何のお店なの?」

「ホストクラブじゃよ。」

「ホストクラブ!?
え~っ…やだよ、私、そんな所だったら、なおさら行けない。
ねぇ、野々村さん…」

「え……」



美幸さんはそうおっしゃったけど、私はなにか少し行ってみたいような気がした。
ホストクラブには、若い頃、友人に誘われて一度だけ行ったことがあったけど、明るくて元気で華やかで…
大きなお店じゃなかったせいか、そんなに素敵な人はいなかったけど、皆、面白くて優しかったし、日常とは明らかに違う空間で心が踊った。
今日はちょうどお酒を飲みたい気分でもあったし、そういうお店に行けば、私の心のもやもやも晴れるかもしれない…
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