赤い流れ星3
side 和彦
「カズ…昨夜、アンリと喧嘩でもした?」

「え…そんなことは別に…」

「アンリって……前からカズに会いたいって言ってたモデルのあの子?」

「そうだよ。
昨夜、カズはアンリをお持ち帰りして…」

「アッシュ!」



美幸の前でそういう話はやめてほしいもんだ。
ふと見ると、美幸はテレビに顔を向け、素知らぬ顔をしていたが、きっとわざと聞いていないふりをしたんだと思う。



本当は合コンに行くのも乗り気じゃなかった。
ただ、勢いで言ったことをアッシュが真に受けてセッティングしてくれたから行かないわけにもいかず…
なんとなく心の中のもやもやを晴らしたいという気持ちもあるにはあった。
自分を鼓舞するようにわざと大袈裟にはしゃいで出掛けたは良いが…
メンバーは、アッシュと同年代の若い男女ばかりで、飛び抜けて年上の俺はなんとなく肩身の狭い思いをして、来た事を少し後悔もし始めていた。
ところが、その中の一人が、以前から俺に憧れていたとかなんとか言って近付いてきた。
まさかとは思ったが、その子はずっと俺の傍にいて、他の男が話しかけても素っ気無い態度を返していた。
お開きになっても、彼女は俺から離れようとはせず……
俺は彼女に誘われるまま、彼女の部屋に着いて行った。



それが、アンリだ。
駆け出しのモデルらしく、まだ大きな仕事はしていないようだったが、エキゾチックな整った顔立ちをしていて、モデルにしては肉感的なスタイルをしている。
センスも良く、話していて頭の良さも感じられる。
確か、24と言っていたから美幸と同じくらいか…
だが、美幸よりはずっと大人に思えた。
そんな素晴らしい女性と一夜を共にしたというのに、俺の心は少しも弾むことはなかった。




(最近の俺はどうもおかしい…
今の仕事が一段落したら、数日休みを取って旅行でもするか…)



ふと浮かんだその考えに、俺はあらためて得心した。
そうだ…最近は全く旅行をしていない。
以前は、しょっちゅうどこかに行ってたのに…
仕事にかまけているうちに、きっと疲れが溜まってたんだ。



「美幸、テレビばかり見てないで早く食べろよ。
時間がないぞ。」

「はい。」

美幸は不機嫌な声で返事をして、食べかけの朝食に再び手を着けた。
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