赤い流れ星3
「あっ!!」

「私のもらったのと違います!」

私達も昨夜名刺をもらったんだけど、それは写真が付いてて、名前も「シュウ」とだけ書いてあるものだった。
住所や電話番号はお店のものだし、メアドも多分そう。
なのに、おじいさんのには写真がなくて、住所や電話番号もメアドも違う。
きっと、これはプライベートのものなんだ。
それはともかく、そこに書かれていた名前は「神咲愁斗」
それを見た私はなんだか背筋が寒くなるのを感じた。



「……嘘…」

「ひかり…どうしたんじゃ?」

「じ、実はね…
私が書いてる小説の主人公の名前が、かんざきしゅうとだったんだ。
だから、昨夜はすっごくびっくりしたんだけど、漢字まで私が考えたものと全く一緒だよ…」

「ほ、本当ですか!?神に咲くと書くかんざきさんは少ないですね。
そんなのまで同じだなんて、それはすごい偶然ですね!」

「もしかしたら、ひかりの運命の相手だったりしてな…!」

「お、おじいさん!」

おじいさんがおかしなことを言うから、私は恥ずかしくて顔が熱くなった。
あんな格好良い人が運命の相手のはずもないけど、最初に会った時、私は声も出なくなって身体ががちがちに固まった。
だって、格好良いだけじゃなくて、私の理想そのもので……シュウさんを見た瞬間、私の書いてる小説の主人公のシュウだ!って、そう思ったんだもん。
そしたら、その人の名前がかんざきしゅうと…
ドラマや映画ならともかく、そんなことが現実にあるなんて…
まさに、奇蹟としか思えない出来事だった。
だから、思わず叫んでしまったわけだけど…



(あ、そういえば……)



「ねぇ、野々村さん…
あの時…シュウさんの名前聞いて私が叫んじゃった時…
なんで、野々村さんも叫んだの?」

「えっ!?……えっと、あ…あの時は確か……
そ、そうだわ!私も実は私もホストクラブに行ったのは、昨日が二度目で……それも最初に行ったのはずいぶん昔ですし、内心すごく緊張してたんです。
あの時、美幸さんが急に叫ばれたんで、その…連鎖反応っていうのか…多分、そんな感じです。」

「そうだったんだ……」

野々村さんはなんだか慣れてるように見えたけど、実際は緊張してたんだ。
私の雄叫びが移ってしまうなんて、相当な緊張だったんだろうね。
考えてみれば、野々村さんはいつどこでもなんだか緊張してるっていうのか、落ち着いてる感じはないもんね。
あれは、野々村さんのちょっとした見栄だったんだと思うと、年上の野々村さんがなんだか少し可愛く思えた。
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