赤い流れ星3
「おまえなぁ…そういう雑なことしないで、せめて裾直しでもしたらどうなんだ?
それに、その服…ずいぶん長く着てるんじゃないか?
けばだってるぞ。」

「これで良いの!
別に、このままでも不自由しないし、裾を切ったら……」

そう言うと、何かを考えるように美幸は不意に口篭もった。



「……切ったらどうなんだ?」

「……なんだろ?よくわからないけど……とにかく切りたくないんだもん。」

美幸はそう言って、不機嫌な顔で俯いた。



「そっか、そっか。
カズ…美幸ちゃんが切りたくないっていうんだからそれで良いじゃない。
それに、古くなっても好きなものってあるよね。」

マイケルが気を遣って、美幸の肩を優しく叩いた。
俺も別になにがなんでも切らせたいわけじゃないけど、若い娘にしてはあまりにも着るものに無頓着なのが気になるだけだ。
我が妹ながら、こんなんじゃ、モテないのは当然だと思う。
生まれてから今日までの二十四年間という長い歳月、誰ともつきあったことがないっていうのはやはり問題だ。
最近ではそういう者も多いと聞くが、他人事ながらとてももったいない気がする。
今になって思えば、顔から火が出そうなくらい恥ずかしいことや馬鹿らしいことだって本気で出来てしまうのは若い頃だけの特権だ。
若さゆえの燃えるような熱い恋をしないなんて、本当にもったいない。
うまくいくにしろいかないにしろ、その人のことが一日中頭から離れなくなるくらい、誰かを好きになるのはやはり良い経験だと思う。
俺は密かに、知り合いを美幸に紹介するつもりだったが、その前に美幸がせめてもう少し恋愛というものに興味を持ってくれるようにしなければならない。
そうでなければ、いくら良い相手を紹介したところで、目に入らないような気がする。



(しかし、それをどうするか…
……そうだ…!
野々村さんに、そのことを相談してみよう!)



俺は咄嗟に思い付いた口実に、心の中でガッツポーズをキメた。
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