赤い流れ星3
「野々村さん、飲みたいのならこんな所じゃなく、もっと落ち着いた店が…」

「いえ…ほんの少しで良いんでここで…
KEN-Gさん、ご迷惑かもしれませんが少しだけ付き合って下さい。」

「そうか……
わしゃ、何も迷惑なことなんぞない。
こちらこそ、ありがとうじゃよ。」



KEN-Gさんって、本当に良い人だ。
あの穏やかな笑顔を見ていると、なんだか……
私は、胸がいっぱいになって、涙がこみあげるのを懸命に堪えた。



「お待たせしました。」



久し振りに飲んだビールは苦くて喉が焼けつくように痛くなって、刺激的で……
気が付けば、私はグラスのビールを一気飲みしていた。
喉だけじゃなく、食道やお腹がかーっと熱くなってきた。
それなのに、私はまた呼び出しボタンを押し込んだ。







「野々村さん、もう止めておいた方がええ。
おまえさん…顔が…ポストみたいに真っ赤になっとるぞ。」

KEN-Gさんが心配そうに私をみつめてそうおっしゃった。



たった二杯なのに…
すでに酔ってるのがしっかりとわかる。
なんだか身体がふらふらするし、顔も身体もものすごく熱い。
それに、わけもなくおかしいんだもの。
隣の人が大きなくしゃみをしただけで、私は噴き出しそうになって…
くしゃみでこんなにおかしいはずがないってこともわかってる。
そう…これは酔ってるから。
わかってる…いたって正気だ。
だけど……どうにも我慢し切れなくなって、私はとうとう噴き出してしまった。



「ど、どうしたんじゃ、野々村さん!?」

「なんでもありません。
私が笑っちゃいけないとでも言うんですか?
私みたいなおばさんは笑うなと?」

「……野々村さん、水を飲むんじゃ。
たくさん飲んで酔いを覚まさにゃ…」

「私が酔っちゃいけないんですか?
私がおばさんだから?」

あぁ、こんなこと言うつもりはないのに、私ったらなに絡んでるんだろう…!
私の正気と酔っておかしくなった神経がせめぎあう。
そして、どうやら酔っ払った神経の方がずっと優性の様子……



「わしから見たら、おまえさんはおばさんなんかじゃないぞ。
まだまだ十分若い!」

「そういえば、KEN-Gさんは一体おいくつなんですか?
そもそも賢者さんに年齢なんてあるのかしら?」

わ、私ったら、なんてことを…!
だけど、後悔してももう遅い。
KEN-Gさんの表情が急に険しいものに変わった。
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