赤い流れ星3




「大丈夫かな?……野々村さん…」

「は、はい、
すみません。
感情的になってしまって…もう大丈夫ですから……」

今度こそすっかり酔いは覚めていた。
こんなに泣いてしまうなんて、みっともない…
でも、安心したしすっきりもした。
これからは、KEN-Gさんともちゃんと話せるはず…



「あ、あの…KEN-Gさん…
確か、こちらには最初美幸さん…ひかりさんですね。
ひかりさんが門をくぐって、その後、シュウさんが同じように門をくぐって…
なのに、なぜ、KEN-Gさんまでが?」

「そのことか……
実は、あれはわしにも予想外のことじゃった。
二人を見送った後、意外なことに門のエネルギーはすぐには消えんかった。
だんだんと弱々しくはなっていたが、消えはせんかったんじゃ。
それを見ているうちに、わしは思いついたんじゃ。
もしかしたら、わしもひかりの世界に行けるかもしれんと……」

「そ、そんな……
でも、門は二人を異世界に送り出して、もうそれほどのエネルギーは残っていなかったんじゃ……」

KEN-Gさんは大きく頷かれた。



「その通りじゃ。
わしにも自信はなかった。
こんな弱々しいエネルギーで、わしを送ってくれるものやらどうやら…
もしかしたら、途中でエネルギーが途絶えて、わしは消えてなくなるかもしれん。
それに、あのまま小説の世界にいればいつまでだって生きられるが、ひかりの世界に行ったら、わしにはそう長い時間は残されておらんということもわかっておった。
じゃが…これは賢者のわしにとっては、またとないチャンスでもある。
知らないことが知れるのじゃ。
そして、なによりも二人の行く末を見届けたかった。
そう思ったら迷いはなくなった。
わしはすぐに自分の人生を書いて、門をくぐったんじゃ。
……無事にこっちに着いた時は、本当にほっとしたぞ。」

KEN-Gさんはそう言って、いつもの無邪気な笑顔を浮かべられた。
ひかりさんとシュウさんのことを本当に大切に…まるで家族のように感じられていることが私にもとてもよくわかった。
そうでなきゃ、そんな大きなリスクをおかすわけがない。
いくら、賢者としての好奇心があったとしても、自分が消えてなくなるかもしれないと思ったらすぐには決断出来ないだろうし、たとえ無事にこっちに来られたとしても、KEN-Gさんは永遠の命を失ってしまうわけだもの…
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