赤い流れ星3
「あ…あの…KEN-Gさん…
私まだどこかよくわかっていないんですが……それじゃあ、シュウさんもKEN-Gさんも今度は戸籍もあって、今までこの世界に存在した人間になってるって……つまり、そういうことなんですか?」

「その通りじゃ。
本当はおらんかったんじゃが、わしらがこっちに来た瞬間に、いたことになった…
いや、いたという現実が組みこまれた。」



KEN-Gさんはいつもと変わらず穏やかな口調でそう言われたけれど、それは簡単に奇蹟と呼ぶことも出来ない程、ものすごいことで……



「あ……そ、それじゃあ、なぜ、KEN-Gさんは向こうでの出来事を覚えてらっしゃるんですか?
お二人はみんな忘れてしまわれてるのに……」

「なにをいうとるんじゃ、野々村さん…
門を動かすために使ったのはシュウとひかり、二人だけの記憶じゃぞ。
わしはそのまま記憶を持って来た。
これから先、ボケたらどうなるかわからんが、な…」

「あ……」



そうだった。
だから、KEN-Gさんは何もかも覚えられていて……
そのおかげで、私の知ってることも現実だと確信出来たんだ。



KEN-Gさんが来て下さって、本当に良かった……
そうじゃなきゃ、私はずっともやもやした不安な気持ちを持ち続ける所だった。



(……あ、そうだ!)



しんみりとした気持ちになった所で、私はまた気になっていたことを思い出した。



「KEN-Gさん、質問ばかりですみませんが、もう一つ教えていただきたいことがあるんです!」

「なんじゃな?」

「美幸さんの物語のことは、元はといえば青木さんに頼まれたことで、私と青木さんはよく会って美幸さんの消息について話しあっていました。
ですが、青木さんはまるでそのことを覚えてらっしゃらない…
美幸さんがシュウさんと会われたことさえ、覚えてらっしゃらない…
えっと…つまり、シュウさんが来られたことをすべて忘れて、美幸さんがシュウさんと会わなかった現実のことしかご存知ないようなんです。
なのに、私は鮮明に覚えている…
これは、なぜなんでしょう?」

「確かにそれは不思議なことじゃな…
……ん……そういえば、和彦さんと出会ってからひかりのことを聞いたと…確か、そう言うとったな?
それじゃあ、おまえさんはひかりともシュウとも会ったことはなかったということか?」

「はい、そうです。」

私が答えると、KEN-Gさんはゆっくりと大きく頷かれた。
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