赤い流れ星3
「不思議に思うかもしれんが、そういうことは現実によくあることなんじゃ。
作者本人が書いていながら、何者かに操られて書かされているような感覚…
キャラが勝手に動くという状態じゃな。
その感覚は錯覚でもなんでもない。
現実にあることなんじゃ。
しかし、当然のことながら、それは作者と物語が密着した関係…信頼関係とでも言うかのう…そういうものがないことには実現せんのじゃ。
本来の作者ではないおまえさんが、物語からの想いを受け取ったというのはやはりおまえさんの持つ能力の賜物じゃろうな。
それにな、作者は物語からの想いを受けるだけではないんじゃよ。
物語も作者の想いを受けとっておる。
お互いの信頼関係がないことにはそのパイプは繋がらんのじゃ。
おまえさんは、おそらくなんとかひかりを元の世界に戻したいと考えとったんじゃないのか?
その想いを物語は受け取ったんじゃ。」

「信頼関係……」

KEN-Gさんのおっしゃることはとても不思議なことだけれど、それでも私にはなんとなく納得出来た。
信頼関係というのは、もしかしたら自分の作品に対する愛情のようなものじゃないかしら?
愛情を注げば注ぐほど、作品もそれに応えてくれる…
あ…物には魂が宿るなんて言われるけど、それに近い事なのかもしれない。
私は、自分の作品じゃないからそれほど愛情を持っていたとはいえないかもしれないけど…
でも、美幸さんがこちらに戻ってこられることを願っていたのは確かだ。
最初、青木さんのお話をうかがった時には半信半疑だった。
だけど、青木さんはどう考えても嘘を吐かれてるようにも、頭がおかしいようにも思えなかったしきっと本当のことなんだと思えるようになった。
そして、小説を書いているうちに私はさらにその確信を深めていって、一度もお会いしたことはないけれど、心から美幸さんにはこちらに戻ってほしいと考えるようになっていた。




(その想いが伝わったってことなのかしら…?
………あ…!)



その時、私にはふと思い当たることがあった。
そうだ…私よりももっとずっと美幸さんのことを心配されていた方がいる……
青木さんだ…私は知らず知らずのうちに、きっと青木さんのそんな想いを感じとって、その想いが物語にも伝わったのかもしれない。
そして、物語はその願いを叶えてくれた……

私は、今更にして作品の持つ大きな力に、深く感心してしまった。
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