赤い流れ星3




「おはよう!」

「……おはようじゃないよ。
また朝帰り?」

「馬鹿。
朝帰りは朝帰りでも、仕事での徹夜だぞ。
そりゃあ寝酒に少しは飲んだけど、ずっと仕事してたんだからな。」

「……そうなの?」

出迎えた美幸は、俺の話を信じているのかいないのか…
ただ、俺のこの最悪な気持ちには少しも気付いてなさそうだった。



「カズ、どうしたの、こんな時間に……」

「どうしたって……
ここは俺の家だぞ。
帰って来るのが当たり前じゃないか。」

マイケルにはアンリと一緒だから遅くなると伝えてあったから、きっと戻らずそのままオフィスの方へ行くと思っていたんだろう。
だが、以前と違って今は美幸がいる。
これからはそういうことは出来ないと、二人にも伝えておかなければと思った。



「じゃ、ちょっとシャワー浴びて来るよ。」

俺は明るくそう言って、そのまま浴室に向かった。



あんな格好の悪い事、誰にも言えない。
たとえ、マイケルにも…
話したら、俺が大河内さんに嫉妬でもしているように誤解されかねない。
俺は嫉妬なんてしていない。
野々村さんのことはなんとも思っていないし、女性に不自由しているわけでもない。
だから、嫉妬なんてする筈がない。
ただ、ほんの少し気分が悪いだけのことだ。
と、いっても、そのことを話したら、流れで野々村さんに以前好きだと言われたことも話さなくてはならなくなる。
だから、言えないんだ。



俺はそんなことを考えながら、熱いシャワーを浴び続けた。
もやもやする心の中も洗い流せたら良いのに……



(あんなことはもう忘れよう。
俺には関係のないことだ。
そうだ…昨夜のお詫びに、今日は俺の方からアンリに電話をしよう。)



アンリに夢中になれば、俺もこんなくだらないことには気にもかからなくなるはずだ。
あの子は、亜理紗のように押し付けがましいこともないし、一緒にいて疲れることもない。



(アンリと楽しめば良いんだ。
なにもかも忘れて……)



そう考えても、少しも心は弾まなかった。
だが、きっとそういう恋愛もあるはずだ。
つきあってるうちにきっと好きになると、俺は自分に言い聞かせた。
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