赤い流れ星3




「ふ~ん…」

美幸は、俺が手渡したメモを見ながら、小さな声でそう呟いた。
それは、野々村さんから預かったもので、野々村さんの携帯のメアドと電話番号が書かれている。



「ふ~んって…それだけか?」

「それだけって…
じゃ、なんて言えば良いの?」

「そ、それは…だなぁ…
ま、とにかく、野々村さんのせっかくの好意なんだ。
仲良くしろよ。」

「わかってるよ。」



家に戻った俺は、野々村さんが美幸と友達になりたいと言っていることを伝えた。
美幸は、友達なんてほとんどいないくせにそう嬉しそうでもなく、かと言って迷惑そうでもなく、どんな風に思っているのかよくわからない。
確かに、一回り以上年上となると「友達」という感覚は感じにくいのかも知れない。
俺は外国で過ごした時期がけっこう長いからそうでもないが、日本人はとかく年齢を気にしやすいものだから。



「私からメールした方が良いのかな?」

「そうだな…一応、メアドと携帯番号受け取ったってことをメールしといた方が良いんじゃないか?」

「そうだね、じゃあ、後で…あ、遅い時間でも大丈夫かな?」

「野々村さんはけっこう夜更かしみたいだけど……そういえば、おまえ、毎日眠そうな顔してるけど、あんまり夜更かしするなよ。」

「ここに来てからずいぶん早寝になったよ。」



美幸は、俺にうるさく言われるのがいやだったのか、それだけ言い残し居間から出て行った。

結局、今夜は野々村さんにあの名刺のことは言い出せなかった。
今日の話題は美幸のことばかりで、美幸の好きなものや最近の美幸のことをあれこれと聞かれた。
なぜ、そこまで美幸に関心があるのか不思議に感じる程、野々村さんは美幸に強い興味を示していた。



(そういえば……)



俺は今頃になって思い出した。
野々村さんの友達の話を聞いたことがないということを…
今の仕事は、時間に縛られる事はない。
だから、遊びに行こうと思えばいつでもいけるはずだが、俺が呼び出して、野々村さんの都合が悪かった事は今までほとんどなかった。
今日も自分は暇だと言っていたが、そんな風だから、野々村さんも友達が欲しかったのかもしれない。
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