赤い流れ星3
side 美幸




「おじいさん…そんなに見ないでよ。」

「恥ずかしいです。」



「そんなことを言ったって……
二人共、これほど変わるなんて……本当にたいしたもんじゃ!」



おじいさんはさっきから同じことを何度言ったか知れやしない。
美容院を出た私達は、ファミレスに向かったのだけど、そこでおじいさんは私達の向かいに座って、感心したように私達をみつめては、同じ言葉を繰り返す。



「二人共、ほんにべっぴんさんじゃ!」



そんなこと言われたこともないから、お世辞だとわかってても恥ずかしくってたまらない。
確かに、野々村さんは別人みたいに綺麗になった。
最初見た時は、我が目が信じられない程だった。
髪はやや明るめの薄茶色になって、緩やかなパーマがかかり、とっても優しそうな雰囲気で、見なれた紺の真面目スーツがちぐはぐな感じがした。
これで、もっとおしゃれなものを着たら、上品なお嬢様タイプになると思う。
それに、年齢がいっぺんに若返った!
確か、兄さんよりちょっと上だってことだったけど、以前は兄さんより年上に見えてたのが、今なら兄さんと同じくらいに見える。
兄さんは同年代の人よりずっと若く見られてるから、野々村さんも実年齢より若く見えるってことだ。
野々村さんは元々体型はスマートなんだし、これであと眼鏡をはずしてメイクをちゃんとすればかなりの美人になってしまうかも…!



私は恥ずかしくて、ちゃんと鏡を見られなかった。
皆、すっごく誉めてくれたけど、整形したわけじゃないんだから、そんなに可愛くなってる筈はない。
でも、顔も剃ってもらったし、眉毛も綺麗に整えてもらったから、少しはマシにはなったと思う。
剃られたうぶ毛を見せられた時は、恥ずかしかったなぁ…
まさか、あんなに生えてたなんて……
これからは少しは気をつけなくっちゃ。



それにしても、あの美容師さん…面白い人だった。
まだ出来たばかりのお店だって言ってたけど、手際は良いしお話上手だから、これから流行るかもしれないな。
でも、内装は凝りすぎ。
もっと普通にした方がお客さんも来るだろうに……



今日は野々村さんと美容院に行くとは言ってあるけど、兄さん達、私を見てどう思うだろう?
髪なんて染めて…って怒るだろうか?
……って、兄さんも染めてるんだから、本当ならそんなこと言えた義理じゃないんだけど、それを言うのがあの兄さんだからね…
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