赤い流れ星3
side 和彦




無意識に口から漏れでた溜め息に、俺は小さく舌を打った。



忌々しいのは俺自身。
野々村さんへのメールには、必要なこと以外は一言も書かないでおこうとする妙な意地……
馬鹿馬鹿しい……
俺は、一体何でこんなに頑なになってるんだ?



(……そんなことはわかってる……)



そうだ。
それは、偏に大河内さんに負けたという俺のプライドのせいだ。



俺は、アッシュが撮った画像を改めて開いた。
ブログのために、アッシュが俺のパソコンにも同じものを送ってくれた。
自分で言うのもなんだけど、高見沢大輔のおかげで俺の雰囲気は今まで以上に垢抜けた雰囲気に変わった。
俺のルックスは、他の男と比べても決して劣ってはいないはずだ。
なのに、なぜ、野々村さんは大河内さんを選んだ?
男の魅力はルックスだけじゃないことはもちろんわかってる。
それ以外にもいろいろなものがある。
冷静に考えて、俺が圧倒的に大河内さんに負けているものがあるとしたら、それは財力だ。



だけど、あの野々村さんが、金を目当てにするとはやっぱりどうしても思えない。
あの人は、他の女性と比べてもお金に執着心を持つ人ではない……
身に付けているものも質素なものばかりだし、贅沢をしたいというような話は聞いたことがない。
だったら、金じゃないのか?
金以外で、俺は大河内さんの何に負けている!?



そんなことを考えて苛立つ自分自身に気が付いて、俺はさらに気持ちが沈むのを感じた。



(何を悩んでるんだ、俺は……)



男の好みなんて、人それぞれだ。
傍から見て、どうしようもないろくでなしに思える男を好きになる女だっているんだから。
こんなこと、考えたって仕方のないことなんだ。
最近のこういうもやもやした気持ちを晴らすためにも髪型を変えたっていうのに、俺はなにをつまらないことを考えてるんだ。



「もうこんなことを考えるのはやめだ!」

まるで自分に言い聞かせるように声に出してそう言うと、俺は、部屋を後にした。
< 162 / 761 >

この作品をシェア

pagetop