赤い流れ星3
(一体、どうしたっていうんだ?
そりゃあ、確かに驚いたさ。
だけど……)



そうなんだ。
それだけじゃなかった。
まるで、初恋の時のようなときめきと照れ臭さ…
もうすぐ四十に手が届こうとしている俺が、まるで思春期の少年のように胸をときめかせているとは一体どうしたことなんだ!?
しかも、相手はあの野々村さんなんだぞ…)



俺は自分の気持ちが理解出来なかった。







「マジ?本当に野々村さんなの?」

「野々村さん……もしかして、どこかいじった?」

アッシュとマイケルに両側からじろじろみつめられて、野々村さんは恥ずかしそうに俯いたままだった。
白いコートの下には、今までの野々村さんからは考えられないような女性らしい薄紫のマキシワンピースを着ていて、俺はそれをたいして興味のない素振りでちらりとのぞき見た。



「カズ、すごいよね!
野々村さん…こんな美人だったんだ!」

「……あぁ…そうだな。
驚いたよ。」

「なんだよ、カズ……
よくそんなに落ちついてられるな。」

「しっかり見てよ、これがあの野々村さんだよ。
別人じゃん!
なんか…年令もすごく若返ったみたい!」

「アッシュ、失礼だぞ。」

口ではそう言いながらも、俺はあらためてその通りだと思っていた。
そうだ、野々村さんが別人のように見えたのには、すごく若く見えるようになったこともあったんだ。
俺とは三つしか変わらないのに、もっとずっと上に感じられる程彼女は老けて見えていた。
ところが、今日の野々村さんはせいぜい三十くらいにしか見えない。



「い、いえ…私,本当にふけてますから。
少しでも若返ったなら、それはタカミーさんのおかげです。」

「え?じゃあ、この服もタカミーに見立ててもらったの?」

「いえ、これは美幸さんと……
あ…美幸さん……」

「あ…あぁ、今、着替えてくるね。
今日はちょっと買い物とかお手伝いとかあって、まだ着替えてないんだ。」

そう言うと,美幸は慌てた様子でその場を立ち去った。



「野々村さん…美幸となにか?」

「え、えぇ…タカミーさんに髪を綺麗にしていただいたんですから、服装も少しマシにしようって、昨日、美幸さんと一緒に買い物に行ったんです。」

昨夜、美幸が野々村さんと会うといってたのはそういうことだったのか。
少しでもおしゃれに興味を示してくれるのは良いことだ。
それにしても、あの美幸が一体どんな服装で現れるのか……
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