赤い流れ星3
「お、お邪魔します…」

玄関には見慣れない女性物のスニーカーがあった。
他の靴とはずいぶん雰囲気の違う靴だから妙に目立つ。
美幸さんのものとも思えないけど、会社の人でもどなたかいらっしゃってるのかしら?



何度か来た事のあるリビングに通されると、そこにはマイケルさんと若い女性の姿があった。
お世辞にもおしゃれとはいえないジャージの上下を着たぽっちゃりした女性…



(まさか……!)



「野々村さん、いらっしゃい。
カズももうすぐ戻って来ますからね。
あ、ご紹介しますね。
こちら、カズの妹さんの美幸ちゃんです。」

「初めまして、美幸です。」



私の目を見ずに小さな声でおずおずと挨拶をする女性は、やはり、美幸さんだった!
違う…小説で感じてたイメージとはすいぶん違う。
顔は青木さんと兄妹とは思えないくらい似てらっしゃらないし、雰囲気もまるで違う。
一言でいうと、オタクっぽい印象の女性だ。
確か、美幸さんは24歳のはずだけど、どこかおばさんくさいようにも見えるし、そうかと思うと高校生みたいにも見えて…
あぁ、もしかしたらそれは美幸さんが全くのすっぴんだからかもしれない。



「美幸ちゃん、こちらは野々村さん。
仕事のこと以外でも、なにかとお世話になってる人なんだよ。」

「は、初めまして!
野々村です!」

美幸さんの観察中に急に声をかけられて、焦った拍子におかしな具合に声が裏返った。
マイケルさんがくすりと笑い、美幸さんは私に気を遣ってか曖昧な笑みを浮かべてた。



「あ……そういえば、美幸ちゃん、お酒飲めないんだっけ?」

アッシュさんが思い出したように美幸さんに声をかけてくれたお陰で、私の恥ずかしさは少し和らいだ。



「え?はい、私、お酒は全然…」

「じゃ、ボク、買って来るね。
コーラだよね?」

「は、はい。すみません。」

「じゃ、僕は料理の準備をしますので、お二人はここでしばらく待ってて下さいね。
じきにカズも戻りますから。」

「は、はい。」
「は、はい。」

私と美幸さんの声が、まるで双子みたいにぴったりと重なった。
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