赤い流れ星3




(ま…怒る程のことでもないか……)



お腹が膨れてきたら、なんだかそんな風に思えて来た。
そういうもんだよね。
おじいさんとラブラブな野々村さんが兄さんに興味がないのは仕方ない事で、それを咎める権利なんて私にはないんだもん。



「それで……野々村さん……
最近は、どうなの?」

「え…?どうって……
なにがですか?」

「なにがって……ほら、好きな人……
野々村さんがどんどん綺麗になって、その人も喜んでるんじゃない?」

「そ、そんなこと、ありません!」



わかりやすい……
野々村さんって本当に感情が出やすいっていうか…あ~あ、耳まで真っ赤になってるよ。



「そんなことないんじゃない?」

「わ、私のことなんて何も……」

「またまたぁ……」



野々村さんがおじいさんを好きなことはもう皆知ってるのに、野々村さんはそのことにまだ少しも気付いてないみたい。
おじいさんもそうなんだろうか?
二人共、周りが気付いてることをまったく知らず、隠し通せてるつもりなのかな?
なんだか、おかしい……



「本当です!
どうせ、最初から……」



野々村さんが小さな声で何かを口にした時、私のスマホに派手なアニメソングの音が響いた。



(誰だろう?)



表示された番号は知らない携帯の番号。
電話がかかって来る相手なんて限られてる。
その人達の番号は当然登録されてるから……間違い電話?
でも、もしかしたら、誰かが携帯を新しくしたっていうことだってあるにはある。



「……はい。」

私は恐る恐る通話ボタンを押した。



「あ、ひかりちゃん?
僕だよ。」

「え……?誰?」

私のことをひかりって呼ぶなんて一体誰?



「酷いなぁ……僕の声、忘れたの?
純平だよ!」

「じゅ、純平君!?」



びっくりした。
まさか、純平君が電話をくれるなんて、考えてもみなかったから。



「ひかりちゃん、あれから全然メールもくれないんだもん。寂しくなって電話しちゃった。
久し振りに声も聞きたかったし……」

「え…?ほ、本当?」



い、いかん、いかん。
普段、言われることのない言葉を聞いて思わず舞い上がりそうになったけど、これはただの営業トークなんだ。
ぼーっとしてるように見えても、そんなことがわからない私じゃないよ。
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