赤い流れ星3




「はい、出来あがり!」

タカミーさんの大きな手が、私の肩をぽんと叩いた。
目の前の鏡に映っているのは、もちろん私だけど、いつもとはちょっと違う私で……



「美幸さん、すごく綺麗ですよ!」

「ほんに、いつもとは別人みたいじゃ。」

「も、もう!おじいさんったら!」

自分で言うのもなんだけど……今日の私はけっこうイケてる!
私の一番のコンプレックスだった目なんて、いつもの倍はあるよ。
信じられない……
あぁぁぁ…なんだか感動して涙が出そうになって来た。



「さ、次は野々村さん、そこにかけて!」

「え…わ、私は今日は……」

「ぐだぐだ言わない!
前よりはマシになったけど、まだ昭和の香りが漂ってるわ。
ささっと手直しするから早く座りなさい!」

「は、はいっ!」



私はまだタカミーマジックから覚め切れず、鏡の中の自分をみつめてぼーっとしてた。
気持ち悪いことはわかってるけど、嬉しくてたまらないよ。
いつもは鏡を見るのなんて大嫌いなのに、今はいつまでだって見ていたいような気分だ。
あの可愛くない細い目が、なぜにこんなにぱっちりになるんだろう?
つけ睫毛ってすごいもんなんだってことに、私は、今日初めて気が付いた。



「はい、これで良いわ。
髪はそのままで良い?
それともこの前みたいにする?」

「あ、今日はこのままで……
どうもありがとうございます。」

「じゃあ、待っててね。
すぐに着替えて来るから。」



タカミーさんがスタッフルームのドアを閉めた音で、私ははっと我に戻った。
野々村さんはさっきよりもまた一段と綺麗になってて……シュウさん達、きっとびっくりするだろうなぁ……え?……まさか、純平君…野々村さんにメロメロになったりしないよね?



(わ……)



野々村さんに嫉妬してる自分に気付いて、我ながらびっくりした。
こんなこと考えるなんて……も、もしかして…私、純平君に恋してる…!?



「……ひかり、どうかしたのか?
顔が赤いぞ…?」

「な、な、なんでもないよ。
ちょっとここ暖房効きすぎだよね?」



う、うわー……
私が「恋」だなんて、キモいよ、柄じゃないってば。
でも……だったら、このドキドキは何だってのよ!?

ますます混乱して来る私の心……やばいよ、やばいよーーー!
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