赤い流れ星3




「わっ!もうこんな時間!」

楽しい時間っていうのは、本当に進むのが早い。
ふと見上げた時計の針は、そろそろ0時になろうとしてて……
今日は野々村さんと食事って言ってあるだけに、この時間はやばい。



「なんじゃ、ひかり…
今夜は急いどるんか?」

「急いでるってわけじゃないんだけど……ちょっとね。
あ、みんなはまだ大丈夫でしょ?
私だけ帰るから……」

「えぇぇ…そうなの?」

純平君が残念そうな声を出して、私をみつめた。
気のせいかもしれないけど……今日は何曲もデュエットして、純平君とは前よりもずっと仲良くなれたような気がする。
って、やっぱりそんなの思いこみ?



「今日はどうもありがとう。
お先に失礼します。」

「じゃあ、僕……」

おじいさん達に軽く挨拶して、純平君が立ち上がろうとした時、なぜだかシュウさんも立ち上がった。



「ちょっと送って来ます。」

「お、おぉ、頼んだぞ。」



え……?なんでシュウさんがわざわざお見送り?
もしかして、純平君は店の外まで見送ってくれるかな?って思ったけど、なんでシュウさんが?



「じゃあ、行こうか。」

「は、はい…」



なんか緊張するなぁ……
部屋を出たシュウさんは、お店の若い子になにか耳打ちして、店を出てそしてエレベーターにまで乗りこんで……



「あ、私…一人で帰れますから。」

シュウさんは私の方をちらっと見ただけで、何も言わずにボタンを押した。



気まずい…
下に降りるまでなんてほんのわずかの時間なのに、なんだか緊張で胃が痛くなりそう……
私は、ただエレベーターの数字を目で追って……1になった時は心の底からほっとした。



「あ、ありがとうございました。」

エレベーターが開いた瞬間、私はシュウさんに頭を下げてそのままそそくさと立ち去った。



「ひっ!」

その時、私の腕をシュウさんががしっと掴んで……



「あ、あの……私、なにか……」

なに?なに?なに?
私、何もしてないよね?

シュウさんは、私の腕を掴んだまま、すたすたと歩いて……
道路の前に立ってたら、私達の目の前に黒い高級車が横付けされた。



「お待たせしました。」

若い男性が降りて来て、扉を開けてくれて…



「あ、あの…私だったら、タクシーで…」

「いいから。」

私は押しこまれるように車に乗せられた。
だ、大丈夫?
まさか、おかしな所に連れていかれたりしないよね?


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