赤い流れ星3




「おまえ…良い所知ってるんだな。」

「そうでしょう?
ここは、けっこう穴場なんですよ。
地元の知り合いに聞いたんです。」

「へぇ……」



眼下に広がる煌びやかな夜景をみつめながら、ふと、頭をよぎるのはあいつの顔……
おどおどしたようなひかりの顔だ。



(俺がそんなに怖いのか?)



あいつを苛めたこともなければ、それほど親しく話したこともないっていうのに、どうしてあいつはあんな怯えた目をする…?
いつもなら気持ちがほっとする夜景をみながら一服しても、俺の気持ちはなかなかまとまらなかった。



(……今夜の俺は、やっぱりどうかしてる。)



「……良太。
そろそろ戻ろう。」

「はい。」







「……そうか…」




店に戻ると、ついさっき皆帰ったとのことだった。
ひかりが帰ったすぐ後で、美咲さんがやっぱり自分も帰ると言い出し、それなら…と大河内さんも帰ると言い出して、高見沢大輔だけが俺を待つといっていたらしいが、迷惑だと思ったのか、大河内さんが説得して連れて帰ったとのことだった。




「ずいぶん遅かったけど、どこ行ってたんですか?」

純平はどこか不機嫌な顔つきで、俺にそう訊ねた。



「あぁ…あの子を送りに行って、それからちょっと時間を潰してた。」

「どうして、わざわざひかりちゃんを送ってなんて……」

「純平…わからないのか?
タカミーさん…ずっと、俺の右腕にへばりついてただろ?」

「……あ……
そういうことだったんですか……」

純平がほっとしたような笑みをのぞかせた。



「……純平……おまえ、あの子のことが好きなのか?」

「好きって……そんなんじゃないですよ。
ただ、気の合うお客さんっていうか……」

純平は俺から目を逸らし、落ちつきをなくして口篭もる。
本当にわかりやすい奴だ。
純平があの子にひかれてることなんて、丸わかりだ。
ふと、数年前、初めて出会った時の純平を思い出した。
あの時のあいつは、今とはまるで違ってて……そして、俺が話しかけた時にもこんな風に目を逸らし、俯いて小さな声で答えた。



(あの時のおまえなら、あの子とぴったりだったかもしれないな…)

俺の心に小さな苛立ちと悪意のようなものを感じ、そのことがさらに俺を苛立たせた。

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