赤い流れ星3
電話を切って、ベッドの上でぼんやりしながら私はふと考えた。



(シュウさんへのお礼……どうしよう?)



なんでそんなこと、気付かなかったんだろう?
え……もしかして、シュウさん……私が送ってもらったお礼を言いやすいように、プライベートの名刺をくれた?
まさかね…そんな恩着せがましいことするわけない。
でも、だったらなんでそんなこと……
なんで、わざわざ私を送ってくれたんだろう?



むっくりと起き上がり、今日お店でもらったポーチを開いた。
蓋の裏側に鏡が付いてる。
鏡に映る私は、見慣れた平凡な顔。
すっぴんだから、本当にイケてないっていうか…ごく普通。
ま、肌はけっこう綺麗だとは言われる。
色もどちらかといえば白い方かな。
シワやシミはまだほとんどない。

だけど、顔の作りはあんまり良くない。
最近はすっごく顔のちっちゃい子が多いけど、私の顔はお世辞にも小さいとはいえないし、ほっぺでたこ焼きが作れる。



(ありえないよ……)



シュウさんがこんな私のどこを気にいるっていうの?
話してみて気があうっていうことでもあったら、そういうことから気にいられるってこともあるかもだけど、そんなのもないわけだし……
考えれば考える程、納得出来る答えが何もない。



もうやめた!
考えたって答えが出ないのなら、考えるだけ無駄だ。



そんなことより、シュウさんへのお礼……どうしよう!?
なにかあげたほうが良いのかな?
でも…シュウさんはホストクラブのオーナーなんだもん。
ショボいものはあげられない…っていったって、私にはショボいものしかあげられない。
やっぱり、ものはダメだね。
じゃ、電話?
でも、電話も恥ずかしいな……
メールにしよう。
とにかく、この前送ってもらったことを早くお礼言っとかないと…!

私は簡単かつごくありきたりなお礼の文面を打ち、そして、先日、シュウさんからもらった名刺を取り出した。
見るだけでなんだか心がざわざわする。
シュウさんがくれたんだから、やっぱりこっちに送らないとだめだよね?
私は名刺を見ながら、慎重に宛先を打ちこんだ。



「shoot-for-the-light@………」


あ…もしかして、「shoot」は愁斗にかけてるのかな?
……え?



それじゃあ、その後の「light」は……ひかり?



ひかりって……私のこと……?

そんな馬鹿なと思いながらも、私の鼓動は速くなって……



(つまらないこと考えないで早く送ろう!)

私は、勢い良く送信ボタンを押しこんだ。
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