赤い流れ星3




「美幸さん…そのくらいにされた方が……」

「いやだ!
今日はとことん飲むんだから!」

目が据わってる……
そりゃあそうだ。
美幸さんは、私と同じであまりお酒が強くなくて、いつもはカクテルやワインをほんの少し飲むだけなのに、今日はビールをもう三倍も飲まれてるんだもの。



「で、でも……青木さんもご心配されますよ。
ほら、時間も……」

「時間も兄さんも関係ないよ!
あぁ…ここじゃあ、雰囲気が出ない!
お店変えよう!
うん、そうしよう!」

そう言うと、美幸さんはいきなり立ち上がり、おぼつかない足取りで歩き出された。



「ま、待って下さい!」

私はレシートと荷物を持って、慌てて美幸さんの後を追いかけた。



「バーはありませんか。
たくさん飲めるバーは……」



あぁ、どうしよう。
美幸さんは、完全に酔っ払ってる。
冷たい風にあたれば、酔いも覚めるかと思ってたけど、私が考えてたよりもずっと酔われてる。
今日はお金もあんまり持って来てないのに困ったな。



(あ…そうだ!)



「美幸さん!良かったらうちで飲みませんか?」

「え……野々村さんのうちで…?」

「ええ、眠くなったら泊まっていただいたら良いし、好きなだけ飲めますよ。」

「私、今夜は寝ないよ。
朝まで飲むんだから……」

「そうですか。
じゃあ、朝まで飲みましょう!」

そうは言っても、美幸さんがそんなに飲めるはずはない。
私はコンビニで数本のビールを買い、タクシーを拾って美幸さんと家に向かった。



「すぐに着きますからね。けっこう近いんですよ。
それと、たいしたおつまみはありませんが、冷凍のピザとか…あ、チーズもあった……それと……とにかくちょっとしたものならありますから……」

そう言いながら、隣の美幸さんをふと見ると、すでに扉にもたれてうとうとされてて……
無邪気な寝顔に、思わず笑みがこぼれた。
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