赤い流れ星3
side シュウ




(たまには良いもんだな……)



見上げた空は子供が絵の具で塗りたくったような鮮やかな青……
俺には不似合いな爽やかさだが、気分はとても高揚した。

こっちに移って来てから、こんな時間に家の側を散歩することなんて一度もなかった。
忙しいだけではなく、気持ちの余裕がなかったのかもしれない。



(都会の割には静かでのどかだ……)

頭上をかすめ飛んだ大きな鳥に、俺は目を細める。



そんな時、俺の後ろから派手なアメ車が通り過ぎた。
せっかくの気分をどこか壊された気がして、俺は苦々しくその車の行く先を見送った。
車はすぐ近くの家に横付けされ、そこから一人の男が降り立った。



(……あ……あいつは……!!)



その男に俺は見覚えがあった。
そうだ……この間、ひかりと一緒にいた男だ。
ということは、もしやあそこはひかりの……いや、違う。
ひかりを送って行ったのは、こっちとは正反対の方角だ。
では……
男は門を開け、敷地の中に入るとチャイムを押した。
俺は物影に隠れ、その様子をじっと見守った。



(……何やってんだ、俺は……)



隠れていることが俺は無性に腹立たしく感じ、そこから離れようとした時に扉が開いた。
そこから顔をのぞかせたのは、また俺の知っている人物……美咲さんだった。
二人は何事かを短く話し、そして男は家の中に上がりこんだ。



(どういうことだ!?それじゃあ、ここは美咲さんの家なのか?
でも、だとしたらなんであの男がここに…?
……ま、まさか、あの男……
ひかりと付き合いながら、美咲さんとも付き合って……)



どう見ても真面目そうには見えない男だ。
あいつなら、二股をかけるくらい平気かもしれない。



(それじゃあ、ひかりはあいつに騙されているってことか…!?)



俺は気持ちが動揺するのを感じた。
出来ることなら今すぐにでも踏みこんで事情を聞きたい。
だけど、そんなこと、出来る筈もなく……



今の俺に出来ることは、そこでしばらく様子をうかがうことくらいだ。
もしも、長い間出て来ないようなら……きっと、俺の推測した通りだろう。



あの男は二股をかけ、ひかりはあいつに良いようにだまされてるってことだ…!


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