赤い流れ星3
side 野々村美咲




「いらっしゃい。
どうぞ、中へ。」

「お邪魔します。」



昨夜から心配でどきどきしていたけれど、昼過ぎに美幸さんから来たメールはいつもと少しも変わらずほっとした。
きっと、今回はまだ純平さんと連絡を取られていないか、純平さんも今日のことを知らされていないのだろうと思う。
それでもまだ心配はあったけど、今、美幸さんの顔を見て、私は心の底から安心した。



だけど……それも、あと少し。
お店に行ったら、純平さんはいらっしゃらない。
美幸さんはどれほどがっかりされるかしら?
ずるいけど、私は事情を知らない顔を貫き通すしかない。



「野々村さん、今日はどんなの着て行くの?」

「え……?
あ、あぁ、実はまだ決めてないんです。
と、いっても、この前のの他には普段のスーツくらいしかないんですが……」

「いつものスーツはだめだよ。
仕事じゃないんだから!
じゃあ、このまえのワンピースと……あ…上にはおるものとかスカーフとかないの?」

「え……えっと…スカーフなら何枚かありますが……」

「どんなのがあるの?見せてよ!」



美幸さんは最近急におしゃれに関心を持たれたようだ。
それも、純平さんのためだとしたら、胸が痛むけど……



「それより、美幸さんのを見せて下さいよ。
今日はどんなのを着られるんですか?」

「これなんだけど……」



美幸さんがバッグから取り出されたのは、春らしいピンクのブラウスだった。




「これを、このパンツの上に着ようと思って……」

「まぁ、とても可愛らしいですね。
これだったら、下はパンツなしでも良いんじゃないですか?」

「……野々村さん…それはせめてあと5kg痩せてからだよ。
この大木みたいな足はまださらせない。」

「た、大木だなんて……」

「本当なんだよ。
最近の若い子は、特に手足が細いから、とてもじゃないけどこんな太い足さらす勇気はないよ。
でも、ダイエット出来たら…その時はミニにも挑戦してみるよ!」

そうおっしゃった美幸さんの瞳は、きらきらと輝いていて……
まさに、恋する乙女の瞳だった。



「それとね…これも持って来たんだ。」

美幸さんが少し照れ臭そうに取り出されたのは、小さなポーチで……
それからごそごそとして、美幸さんが私の前に片手を差し出された。
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