赤い流れ星3




「おぉ、シュウか。
どうかしたのか?」

「こんな時間にすみません。
あ、あの……昨夜は、皆さん、早くに帰られたので……もしかしてなにか失礼があったんじゃないかと……」



次の日の朝、俺は大河内のじいさんに電話をかけた。
昨夜、ジョーから聞いたひかりの兄のことがまだ心にひっかかっていたからだ。



「なんじゃ、そんなことを気にしとったのか。
気にするようなことは何もありゃせん。
ひかりの兄さんは多少厳しい人でな……」

「あ、あの…ひかり…さんの兄さんって……えっと、その…亜理紗と……」

「その通りじゃよ。
ひかりの兄さんは、かなりのイケメンでな…
当然、すごくモテるんじゃ。
ま、おまえさんとよく似たタイプということじゃな。」

大河内の爺さんは、そう言ってからからと笑った。
爺さんがこんなことで嘘を吐くわけはない。
俺は、自分が勘違いをしていたことをようやくはっきりと実感した。



「……ジョーに聞いたんですが……ひかりさんとは、なにかわけありの兄弟なんですか?」

「わけありという程のことじゃあないがな…
ひかりのお母さんは和彦さんを産んでから離婚し、その後、ひかりの父親と再婚して、ひかりが生まれたんじゃよ。」

「……なるほど……そうだったんですか。」



話の流れからして「和彦」というのは、ひかりの兄さんのことだろう。



(そういえば……)



亜理紗が部屋に入って来た時、美咲さんを見て「あんた、カズの職場のおばさんでしょ…」
そうだ、確かそんなことを言った。
だから、俺は師匠のカズさんのことを思い出して……



やはり大河内の爺さんの話していることは嘘じゃない。
つまり、ひかりに兄がいるというのは本当のことで、先日、俺が見たあの男は、ひかりの兄だったんだ……




「あの…それで、ひかりさんは、お兄さんと一緒に暮らされてるんですか?」

「そうなんじゃ。
ひかりは、おばあさんの住んでた田舎の家で気ままに一人暮らしをしていたんじゃが、ひかりもそろそろお年頃じゃ。
定職にも着かずぶらぶらしてることをご両親が心配されてな。
見合いでもさせようと思われたようじゃが、ひかりはそれがいやで和彦さんの所に転がり込んで来たってことなんじゃ。
ひかりは、残念ながらまだ一人で自立してやっていくだけの甲斐性がなく、それで、兄さんには頭が上がらんということなんじゃよ。」

「はぁ……」

俺は、自分の妄想にも似た勘違いに、ほとほと呆れてしまった。
それと同時に、ひかりが見た目通りの女だったことがわかり、おかしな話だがなぜだか気持ちがほっとした。
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