赤い流れ星3
「そういえば……
おまえさん、ひかりの指輪になにか関心でもあるのか?」

「えっ…!?
特にそういうわけでは……」

「しかし、わざわざひかりの手を取って見ようとしていたじゃあないか。
それともなにか……?おまえさん…ひかりの手でも握りたかったのか?」

大河内の爺さんの冗談に、俺は柄にもなく焦りを感じた。



「ば、馬鹿なこと言わないで下さいよ。
俺は、本当に……ただあの指輪が……なんとなく、気になっだだけで……」



そう言いながら、俺はその理由が思い当たらなかった。
俺は、毎晩、女性客の相手をしている。
女達がじゃらじゃらと着けてくるアクセサリーも、見飽きる程見て来ている。
昨夜のひかりが着けていたものとは比べものにならない目も眩むような高価な宝石だってうんざりする程見て来ている。
だが、俺は、今までそんなものに関心を持ったことは一度もなかった。



(なのに、どうして昨夜はあの指輪に……?)



あらためて考えればそれは本当におかしなことだ。



「……シュウ?
どうかしたのか?」

「え……?い、いえ……
なんでもありません。
と、とにかく……何事もなかったのなら、良かったです。
あ、そうだ!
慎二はいかがでしたか?
お気に召していただけたでしょうか?」

「あぁ、慎二はええ子じゃな。
明るいし、話題が豊富で、気遣いも細やかじゃしな。
次回も彼で頼むよ。
そういえば、わしが純平を替えてほしいと言ったこと、黙っていてくれたんじゃな。
気を遣わせてすまなんだな。」

「いえ、そんなこと……」

「では、また近いうちに寄らせてもらうから……
よろしく頼んだぞ。」

「こちらこそ……」



電話を切ってからも、まだどこか夢の続きを見ているような気がした。
いや、俺の勘違いこそが夢のようなものだったわけだが……



(ひかり……なぜ、あいつのことがこんなに気になるんだ…?)


< 278 / 761 >

この作品をシェア

pagetop