赤い流れ星3
「あ……シュウさーーーん!
ここです!こっち、こっち!」

慎二さんは素早く立ち上がり、まだ姿の見えないシュウさんに大きく手を振られる。



「ここ、広すぎて、下手したら遭難しそうやなぁ…」

「それなら、いっそのこと迷路のような家にすりゃあ良かったな。」

「あかんで!
大河内さんは、ほんまにやりそうやから怖いわ。
あ!シュウさん!ここです!」



慎二さんの視線の先には、シュウさんとその後ろに少し離れて美幸さんの姿があった。
私がふとKEN-Gさんは方を見ると、KEN-Gさんは困ったような顔で微かに微笑まれた。

きっと、私と同じお気持ちなんだと思う。
シュウさんと美幸さんが二人っきりになってた時間は、せいぜい30分足らず。
それだけの時間で、急に親しくなる事は難しい。
それに、目の前の二人のご様子からしても、なにかあったようには思えない。
シュウさんはまっすぐ前だけを見て、後ろの美幸さんのことなんてまるで気にされていないみたい。
美幸さんも特に変わった様子はない。



「おぉ、シュウ…すまんかったのう…
とっておきの酒を探しておったんじゃが、それがなかなかみつからんでな。」

「みつからないなら、無理に探さなくて良いよ。
酒なら、毎晩浴びるように飲んでるんだ。
休みの日くらいは休んだ方が良い。
って、もうけっこう飲んだけどな。」

シュウさんはそう言って、苦笑された。



「それもそうじゃな。
では、お茶でも飲むか。
スィーツでもつつきながら、おしゃべりでもしようじゃないか。」

「俺、実は甘いもんは苦手なんやわ。
でも、おしゃべりは大好物やで!」

「そうか、それは残念じゃのう。
シュウは、甘い物はけっこう好きじゃったよな?」

「え……そうだけど、なんで知ってるんだ?」

「え、ど、どうしてじゃったかのう?
店で誰かに聞いたような……
年を取ると、なんでも忘れっぽくなって困るわい。」

KEN-Gさんは、笑って誤魔化されてたけど……
シュウさんとはずっと仲良くされてたんだから、シュウさんのお好きなものも知ってらっしゃるんだわ。



(こんな風にシュウさんと会われることを、今、一番喜ばれているのはKEN-Gさんかもしれない……)



お店で初めてシュウさんに会われた時のあのなんともいえないKEN-Gさんの表情を思い出し、私は胸が熱くなった。

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