赤い流れ星3
話してみると、美幸さんは思ったよりも気さくで話しやすいタイプの人だった。
あんまりおしゃべり好きな方ではないと思ったけど、アニメやゲームの話になると途端に目が生き生きと輝き出して止まらないような勢いで話して下さる。




「カズ、遅いな…
何やってんだろう?」



すぐにでも戻って来ると言われてた青木さんは、マイケルさんの予想を裏切り、アッシュさんがコンビニから戻り、食事の支度が全部整ってもまだ戻って来られなかった。



「ボク、電話してみるよ。」

アッシュさんが、携帯をぱちんと開いたちょうどその時、表で車の停まる音がした。



「やっと帰って来たか…」

アッシュさんが玄関に向かい、戻って来られた時には青木さんも一緒だった。



「お待たせしてすみません。」

そう言った青木さんはまるで変わった様子はなくて、いつも通りのさわやかな笑顔…
その顔を見ていると、なぜだか不意にあの時のことが頭をかすめ、私は顔が熱くなるのを感じ、そっと俯いた。



(馬鹿ね…
状況は変わったのに…
今は、美幸さんが小説の世界に行ってない状態になってるんだから、美幸さんのことで私と青木さんが度々会う事もなかっただろうし、当然、あんなことだってきっと起きてない筈…
それに、そもそも、あれはただの青木さんの優しさだ。
私のことが可哀相にに想えて、それでついあんなことをされただけだと思う。
まるで、外国人の挨拶みたいな軽いキスだったもの…)




そう思っても、それでもやっぱり私の顔は熱く、鼓動もとても速かった。
本当に馬鹿みたい。
こんなおばさんなのに、あんなことを思い出すだけでこれほど動揺してしまうなんて…



「どうしたんだよ、カズ。
今から出るって言ったわりには遅かったじゃないか。
皆、待ってたんだよ。」

「悪い、悪い。
出ようとした所に、ちょうど電話がかかって来て、それがすごく長引いてな…」

「今日くらい、そんなことは放っておけば良かったのに…
ま、とにかく早く座ってよ。」

青木さんが席に着かれ、皆のグラスのビールやコーラが注がれた。
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