赤い流れ星3
なんだか…
この家は、私には居心地が悪い…
きっと、傍から見ればとてもうらやましい環境なんだろうけど、私にはけっこう辛い場所。
アッシュさんもマイケルさんも優しくはしてくれる。
だけど、食卓を囲む今のこの様子を見たら、誰だって違和感を感じる筈。
ここにいるのは、まるで、モデルかミュージシャンみたいに若くて格好良くて…しかも外国人のアッシュさんとマイケルさん…
それに、ちょっと渋い俳優さんみたいな兄さんは、口煩い所はあるけど、妹の私から見ても確かに素敵で、そして三人共遊び人…
そんな三人の中に、どうして私が混じっているの!?
元々綺麗でもない上にぽっちゃりしてて、しかもおしゃれにはまるで関心のない真面目なオタク…

……どう考えても私だけ浮いてるよ。



たとえば、これが漫画や小説ならありだと思う。
ひょんなことからさえない女の子が美形三人の家に下宿するようになって、そのうち、なんらかのきっかけがあって、その子は努力して見違える程綺麗になって…
あ…努力じゃなくて、魔法とか整形っていう設定でも良いかもしれない。
とにかく、そうなると今までとは立場もすっかり逆転して、三人の男性達がその子を奪い合うようになるっていう…
三人が、その子の気持ちを自分の方に向けようと、激しいアタックをかけて来て…



「……美幸…どうかしたのか…
……美幸!」

「えっ!?な、なにっ?」



ふと見ると、アッシュさんとマイケルさんは俯いて小刻みに肩を揺らしてる。



「美幸…おまえ、何、考えてたんだ?
ものすご~くだらしない顔してたぞ。
……はは~ん、わかった。
大河内さんの所の昨日の食事を思い出してたんだろう!」

兄さんは自信ありげにそう言って、勝ち誇ったように頷いた。



「そ、そんなこと……」

「カズ…別に良いじゃないか。
美幸ちゃんは育ち盛りなんだしさ。」

「あんなすごい食事、レストランでも滅多に食べられないよ。
思い出すのも無理ないよ。
ねぇ、美幸ちゃん!」

かばってくれるのは嬉しいけれど、なぜ、私が食べ物のことを考えてたって決め付けるんですか!?
それに、マイケルさん…育ち盛りって、私は野球部所属の男子中学生じゃないんだから…!

皆は私が携帯小説ファンだってことは知らないけど、オタクだってことは知ってるんだから、そっち系の妄想をしてたって思ってくれても良いでしょう!?



(私って、食べ物中心の女だって思われてるんだ…)



なんだか…すごくがっかりだ。
だけど、本当のことを言える筈もなく…私は曖昧な笑みを浮かべてその場を誤魔化した。
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