赤い流れ星3




「じゃあ、また明日な。
気を付けて帰れよ。」



慎二が帰り、一人になった俺は、さっきから心にひっかかっていたことと向き合っていた。



(なんで、あんなことを……)



俺は、今日、じいさんの屋敷に行ったことを慎二に口止めした。

それは、他のホストの手前だ。
休みの日にまでじいさんに呼ばれたなんてことを知られたら、慎二が他の者から妬まれるかもしれないと思ったからだ。



そう、理由ははっきりとあるんだ。




(……だけど)



本当にそうなんだろうか?
なら、どうしてすぐにそう言わなかった?
俺が慎二にそんな話をしたのは、じいさんの屋敷を出てからのことだ。



いや…それは、最初から慎二がそんなことをぺらぺら喋るとは思ってなかったからだ。
でも、俺がそう思っていてもそうじゃないかもしれない。
だから、念のために言っただけだ。



(そうだ……それ以外にどんな理由があるっていうんだ?)



そう思った時、俺の頭に浮かんだのはひかりの顔……
おどおどとした表情で俺をみつめるひかりの顔……



ひかり……?
ひかりが、今日のことになにか関係でもあるっていうのか?
何もないじゃないか。
俺は、ひかりや美咲さんが来ることを聞いてなかった。
ひかり達も知らなかったようだ。
だから、ひかりのことなんて、何も関係ない。

そう考えた時、不意にあの時のことが脳裏に浮かんだ……
他愛ない話で、ひかりと顔を見合せて笑って……
あの時、俺はなんともいえない温かで幸せな気分を感じて……
あの時のひかりの顔を思い出すと、燃えるように胸が熱くなる。



「……畜生!何なんだよっ!」



ざわめく心が押さえきれずに、俺は苛立ちを声に出していた。



……最初からそうだ。
あいつに初めて会った時から、俺はずっと心をかき乱されてる。
その理由がわからないだけに、余計に落ちつかなくなるんだ。



(このままじゃいけない!)



なんとかしなきゃな。
あいつに、調子を狂わされないように、なんとか……


< 308 / 761 >

この作品をシェア

pagetop