赤い流れ星3
さっきまで名前の表示されてなかったシュウさんからのメールに「神咲愁斗」の文字が表示されるようになった。

ごく当たり前のことなのに、なんだかとても落ち付かない。
恥ずかしいような…どこか怖いような…おかしな気持ち。



考えてみれば、シュウさんのこの名前は私が書いてた携帯小説の主人公と同じで……
漢字まで同じなんだよねぇ……
日本に一体どのくらいの苗字や名前があるのかわからないけど、それはきっと途方もない数で、その苗字と名前が組み合わさったシュウさんの名前が、私の考えたものと一致するなんてことは、きっともうありえないくらい少ない確率なんだと思う。



(ある意味、運命……?)



って、馬鹿馬鹿!
なにが運命だっていうのよ。
たとえば、私とシュウさんが結ばれる……とか?



「ない、ない、ない!!」



そりゃあね…小説とかならあると思うよ。
そういう奇跡的な偶然から、たまたま出会うわけよね。
男の方はどっからどう見ても格好良い人で、女の子はあんまり綺麗じゃない…どこにでもいそうな女の子。
最初はお互いなんとも思わないんだけど、それがどういうわけかだんだんひかれるようになって、最後はハッピーエンド…みたいな…ね。

でも、現実にはそんなことなんて絶対ないよ。
現に、私はシュウさんにどっちかっていうと嫌われてる。
まぁ、嫌われてないにしても、恋愛感情みたいなものを抱く対象とは見られてない。
そんな私が「実は、私が書いてた小説の主人公の名前がシュウさんと同姓同名なんですよ!」なんて言ったらどうなる?




「へぇ…」



きっと、シュウさんの口から出て来る感想はその程度だよ。
そして、心の中ではちょっと不愉快に感じてるんだ。



おまえに小説なんて書けるのか?
どうせ、ろくでもない内容なんだろう?
恥ずかしいからやめてくれよ。


そう…きっとそんなことを考えるだろうね。
つまりは、仲良くなれるどころか、余計に嫌われるっていうのが現実なんだよね。
だいたい、格好良くてモテモテな男性が、どこにでもいそうな…いや、ちょっと冴えない女の子を好きになること自体、滅多にあることじゃないんだよ。
綺麗なものや可愛いものを見過ぎたら、そうじゃないものが新鮮に思える…なんて、そんな発想はないない。
たとえ、一瞬そんな風に思ったとしても、すぐに正気に戻るよ。
シュウさんは冷静な人だから、最初からそんな錯覚にも落ちないね。



(そう…私とシュウさんには、小説みたいなことはありえない。)
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