赤い流れ星3
「ひかりは助手席じゃ。」

「え?私も後ろで良いよ。」

「前の方が見晴らしがええぞ。
さ、シュウ…」

おじいさんがそんなことを言うから、シュウさんは仕方なく前のドアを開けてくれた。
なんでそんなことを…って思ったけど、すぐにピンと来た。
おじいさんはきっと野々村さんといちゃいちゃしたいんだ。
たとえば、前からは見えないように手を繋いだり…
おじいさんの気持ちがわかってしまったら、私もそう頑なに後ろが良いなんて言えないけど…でも、シュウさんの視線が怖い。
シュウさんも本当は私を助手席に座らせたくないんだろうな。



「シュウ自身が運転なんて珍しいな。」

「あぁ、今日は飲まないから、自分で運転して来た。」

「普段、あんまり運転しない割にはうまいんじゃな。」

「まぁな。」



確かに、シュウさんの運転はうまいと思う。
本当になにをさせてもよく出来る人だよ。
見た目はばっちりだし、頭も良い、歌もうまい…気難しいってことをのぞいたら、本当にパーフェクトな人だよね。



「ひかり、和彦さんにはうまくいってきたのか?」

おじいさんが後ろから声をかけてきた。



「うん、野々村さんと遊びに行くって言って来た。
それに、今日は皆で大掃除するらしいから、きっとずっと家にいると思うよ。
アッシュさんは洗剤買いに出かけたけど、どうせすぐに帰るだろうし。」

「大掃除?なんでまたこんな時に大掃除なんかするんじゃ?」

「イギリスから友達が遊びに来るんだって。
あ、その人が来たらパーティするらしいから、きっと野々村さんもおじいさんも呼ばれるよ。」

「そうか、そりゃあ楽しみじゃな。」

「皆、仲が良いんだな。」

「まぁな…
本当はおまえさんのことも紹介したいところなんじゃが、和彦さんという人は妙に固いところがある人でな…」

シュウさんはその言葉に、曖昧な笑みを浮かべるだけだった。



おじいさんの言う通りだ。
兄さんもけっこうな自由人だけど、ホストなんかを連れて行ったら…
いや、違うな。
兄さんはきっとホストっていう職業に偏見を持ってるわけじゃない。
ただ、私がそういう人と付き合いがあるってわかったら、きっとそれを不快に思うだけ。
それも、私を思ってのことだろうから、そう思うと私も何とも言い難いのだけど…
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