赤い流れ星3
***




『そうだね。
今度は、野々村さんもコスプレしようよ!』



あの日以来、野々村さんとのメールのやりとりが少し増えた。
野々村さんが書いて来るのは、たいていがおじいさんのこと。
おじいさんのことをどう思うかとか、近々おじいさんと会う予定はないかとか…

やっぱり、マイケルさんの言ったことは正解だ。
野々村さんはあのおじいさんに恋してる。
ここ最近のメールのやりとりで、私はそのことを確信した。

私は野々村さんと知り合ってまだ間がないし、どんな人か詳しくは知らないけど、やっぱり誰だって将来に不安はあるだろうし、一人で生きていくよりは誰か支えてくれる人がいた方が良いに決まってる。
二十代から三十代、三十代から四十代と変わる時に結婚する人が多いとも聞いたことがあるけど、やっぱりそういう時って特に焦る時期なのかもしれない。
野々村さんの身近にいる男性といえばうちの三人だろうけど、アッシュさんやマイケルさんは年下過ぎるし、兄さんとは年は近いけど、きっと望みはないって野々村さんは考えて眼中にないんだと思う。

だけど、おじいさんなら、もしかしたら自分を受け入れてくれるかもって思ったんだろうな…



だったら、私も応援したい。
野々村さんに幸せになってほしい。



(でも……私みたいに恋愛経験ゼロの女に、なにか出来ることがあるだろうか?)



惨めだ…
他人の心配するより、自分の心配しろよって感じかもしれない。
今はまだ若いから良いけど…この先、私も年を取ることは逃れようのない現実で…
私が年を取れば、父さんや母さんも当然年を取って、死んでしまうことだってある。
兄さんだって、いつ結婚するかわからないし、そうなったら私は誰からも面倒をみてもらえなくなるわけで…
あぁぁ…考えるだけでも気が重い。

一人で食べていける程稼げるようになれる日なんて来るのかな?
私が今まで働いたのはアニメさんだけ。
アニメに囲まれて働けるのは嬉しかったけど、結局、通勤が大変で辞めてしまった。
それに、あそこではバイト料はおこずかいにはなったけど、あれだけで暮らしていくと考えるとやっぱりきつい。
あそこじゃ家賃もかからなかったし、少ないとはいえ仕送りもあったから大丈夫だったけど、あれっぽっちで家賃から全部払うなんてなったら、きっとものすごく厳しい生活になる。



(やっぱり、私には一人で生きていくなんて無理っぽいよ……)
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