赤い流れ星3
side 和彦




「ネイサン、居間に布団を敷くから…」

「あ、僕はカズの部屋で寝かせてもらうよ。」

「えっ?俺の部屋で?」

「あぁ、僕にはタカミ―みたいな趣味はないから安心してよ。
カズとはいろいろと話したいこともあるからね。」

そう言って、ネイサンは俺に目配せを送った。
話したいことって何だろう?
俺はネイサンとはそれほど親しいわけじゃない。
いや、親しくないというのとは少し違うが、アッシュ達の方が、親しいはずなのだけど…
ただ、俺とは年齢が近いから、もしかしたら、なにか相談事でもあるのかもしれない。







「カズ…本当に良かったね!」

部屋で二人っきりになった途端、ネイサンがそんなことを言い出した。



「良かったって、何が?」

「何がって、妹さんのことに決まってるじゃない。」

「美幸のこと?美幸の何が良かったんだ?」

「カズ…ふざけてるの?」

「え?俺はふざけてなんかないけど…」

ネイサンは怪訝な顔で俺をみつめていた。



「まさか、あの時のことは冗談だった…なんていうんじゃないだろうね?」

ネイサンの顔が急に険しいものに変わった。



「ネイサン、一体、何の事を言ってるんだ?
君の行ってることが、さっぱりわからない。」

「だから…あの時のことだよ。
妹さんが違う世界に行ってしまったっていう…」

「違う……世界?」

ネイサンの言葉を聞いた途端、なんだかたとえようもなく不安な気持ちになった。
心の中がざわめいて、酷く落ち着かない。



「カズ…どうかしたの?
まさか、忘れたっていうんじゃないだろ?
君はあの時、僕にシュウを預かってくれって頼んだ。」

「……シュウ……」

知らないはずのその名前が、頭の中でぐるぐると回り始めた。
なにかを思い出しそうで…でも、それがつかめない。
今日はずいぶん飲んでたというのに、酔いもすっかり覚めてしまってた。



「そう、シュウだ…シュウは、美幸ちゃんが書いた携帯小説のオリキャラだ。
そのキャラクターが、現実に現れたんだ。
カリスタギュウス流星群の奇蹟で、小説のキャラクターが具現化したんだ。」

「な…
カリスタギュウス……」

俺は全身から汗が噴き出すのを感じた。
ネイサンの言う言葉に、心臓が…頭が、激しく反応する。
速まる鼓動…痛む頭…
何かが、点から形作られそうで…



「カズ…大丈夫か!?」

「だ、大丈夫だ…」

「いいか?美幸ちゃんは、小説の続きを書いた。
二人が、時空を超える門を通って、小説の世界に行くって物語だ。そして、ふたりは……」

「あ、ああああーーーーーっ!」


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