赤い流れ星3
俺はネイサンと一緒に、美幸の物語を読み耽った。
読めば読む程、当時のことが鮮明に思い出される気がした。
美幸の物語と並行して、こっちで起きていた出来事さえもが呼び起された。



「大河内さん…これは本当のことなんですか?」

「あぁ、本当じゃ。
この物語の通りに、わしらの世界は動いておった。」

やはりそうだったのかという想いと、いまだどこか夢のような気持ちを同時に感じた。



「ここからが、付け加えた部分です。」

それは、美幸が門の向こう側に消え、その後、賢者がシュウを門の向こうに突き飛ばしたところだった。



「野々村さん…本当にこの先はないのか?」

「ええ、私が書いたのはここまでです。」

「やはりそうか…
しかし、おかしいのう。
それじゃあ、わしがこっちの世界に来たのは、わしの意思ということなのか、それともやはり物語の意志なのか…」

大河内さんは神妙な顔つきでパソコンの画面をみつめていた。



物語の意志…
今までに野々村さんもそんなことを口にしたことがあった。
野々村さんの特殊能力で、美幸の意志をくみ取って書かれていたと思っていたが、それは美幸のものではなく物語の意志だったのか?



誰も口を開く者はいなかった。
そう…きっと誰にも分らなかったんだ。
この不思議な出来事が、どういう力によってもたらされたものなのか…
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