赤い流れ星3
「あ、あの……こんな時になんですが、あんまり長い間ここにいたら、まずいんじゃないですか?」

「え?あ、あぁ、そうだな…」

「でも……」

口を挟もうとしたシュウに高坂は小さく頷いた。



「和彦、場所を変えて話がしたい。
時間は取れるか?」

「は、はい…」

「ありがとう。じゃあ、また近いうちに…」

高坂は、ハンカチで丁寧に顔を拭い、シュウに向かって微笑んだ。



「じゃあ、行こうか。」

俺達は、なにもなかったように部屋を出た。
シュウと高坂は、各テーブルを回っている。



「和彦さん、なにかあったんですかな?」

「いえ…たいしたことじゃないんです。」

俺にはそう言うしかなかった。
俺の心の中はまだ混乱していたし、こんな時に「父親に会った」なんていうのも野暮だ。



さっきはちょっと冷たいかとも思ったけれど、あの場にいるのが辛かったから、あんなことを言ってしまった。
実際、今日は高坂を歓迎するパーティなんだ。
当の高坂がいないのでは話にならない。
おかげで俺はあの場所から解放され、冷静になる時間を得ることが出来た。
冷静になれたとはいえ、まだ心の整理はつかないが…



もう俺の人生からは死んだも同然だった父親…
それが突然現れた。
しかも、見た目は実際の年齢よりもずっと若い。
そうでなくとも、高坂は一般的な父親よりは若い時期に父親となっている。
確か、母さんより一つ上だったはずだから19の頃だ。
と、言うことはもう還暦近いはずだが、40代くらいにしか見えない。
義父と比べると、まるで親子だ。
だからこそ、混乱してしまう…
まるで、友達のような男に「父親だ」と言われても、ピンと来ない。



「カズ…どうかしたの?」

「え…?いや、別に…」

「別にって…ぼーっとしちゃって、本当に大丈夫なの?」

「大丈夫に決まってるだろ。」

心配するマイケルに俺は無理して笑ってみせた。
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