赤い流れ星3




「純平、今、ちょっと良いか?」

「はい、なんでしょう?」

「すまないが、アニメの曲をこれに入れて来て欲しいんだ。」

そう言って、オーディオプレイヤーを手渡した。
俺は、アニメのことは全くわからない。
だから、純平に頼むことにした。



「あ、面倒だったら、CDを買って来てくれても良い。」

「あの…どんな雰囲気の曲が良いんですか?」

「そうだな。速くて派手な曲が良いな。」

「わかりました。
でも、どうしてアニメなんか?」

「え……そ、それは…だな。
カ、カズが最近アニメソングに目覚めて…なかなかうまく歌いやがるんで…それで…」

それは嘘じゃないのに、なぜだか小さな罪悪感みたいなものを感じてしまった。



「なるほど…そうだったんですね。
確かに、カズさん、めちゃめちゃうまいですよね!」

「うん、そうだろ。
だから、俺も負けたくなくてな。」

「シュウさんの音域にぴったりの派手な曲がありますから、明日、入れて来ますよ。」

「助かる。ありがとな。」

なんとなく純平の視線を外してしまう。
その理由はわかってる。
きっと、今度、ひかりとアニメを見に行くからだ。



でも、何もふたりっきりで行くわけじゃない。
野々村さんやカズも一緒だ。
それに、俺は、ただ偏見なしに趣味を作ろうと思ってるだけだから。



(うん、それだけだ…
それ以外に、何があるって言うんだ。)



ざわめく心を落ち着かせるため、俺は自分に言い聞かせた。
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