赤い流れ星3
野々村さんは、もしかすると運命論者なんだろうか?
俺は、人生のすべてが決められてるなんて考えるのはいやだから、そういう考え方は嫌いだったけど…



でも、決まっているのなら、逆に悩むことも少なくなるのかもしれない。
今日はふとそんな風に思った。
俺は、正直言って、今まであまり幸せだと思ったことはなかった。
父親の顔を知らずに育ち、母親からは父親の悪口ばかりを聞かされた。
だから、ろくでもない奴だと思っていたし、そのおかげで父親への思慕も全くなかった。



母親が再婚して、美幸が生まれて…
家族が増えたはずのに、俺の孤独感は強くなるばかりで…
そして、それに耐えきれずに家を出た。



それなのに、家を出たら出たで寂しくてたまらなかった。
あの時、俺は判断を誤ったと思った。
でも、引き返すことも出来ず、何年も苦しんだ。
でも…あんなことも、最初から決まっていたことだと思えば、きっとあそこまで苦しむことはなかっただろう。



成功だけではなく、間違うことも最初から決まっていたのなら…
間違った道さえも、実は間違いではないと言える。



(……ややこしいな。)



そういえば、ネイサンがそれらしきことを良く言う。



『カズ、この世に間違いや失敗なんて何もないんだよ。
いやなことも悪いことも、すべては必要なことなんだ。』



人生が決まっていても決まっていなくても、そんな風に考えられれば生きやすくなれるのかもしれない。
どんなことでも受け入れられるようになれば、この世界はそう悪いものではないと思えるのかもしれない。
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