赤い流れ星3




「あれ?兄さん…昨夜は眠れなかったの?」

次の日の朝食の席で、美幸が唐突にそんなことを言った。



「え?……そんなことはない。」

口ではそう言ったが、実は美幸の言う通り、少しも眠れなかったのだ。
野々村さんのことが気になって…そして、自分の気持ちがよくわからなくて…
取り留めなく考え事をしているうちに、夜が明けていた。



「旅行の疲れが出たんじゃない?
カズ…目の下が隈になってるよ。」

「え?」

「どうせまた飲み明かしたんでしょ?
カズももう若くないんだから、少しは気を付けないと、ね。」

「……余計なお世話だ。」

わざと不貞腐れて答えた。
マイケルの言うように、飲み明かしたせいだと思われた方が助かる。







「……ズ、カズってば!」

「え?何か言ったか?」

「何か言ったかじゃないでしょ。
どうかしたの?今日は朝からどうもぼーっとしてるみたいだけど…」

「す、すまん。やっぱり旅行の疲れだろうな。」

そういうしかなかった。



仕事中も俺はついつい昨夜の続きを考えてしまってた。
こんなことでは、美幸の手前も示しがつかない。



(やめだ、やめだ。つまらないことを考えるのは。)



「ちょっと顔洗って来るな。」
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